「とーかいどーさーん」
自分を呼ぶ声がする方を東海道が振り向けば、そこにはよく似た小さな姿が二つ。
繋いだ手を小さく振って「せぇの」と、タイミングを合わす。
「「開業おめでとーございます!」」
綺麗に揃って祝いの言葉をくれた二人に視線を合わせるように東海道が屈んだ。
「ありがとう。一区、二区」
それぞれの顔を見て礼を言う東海道に、再びタイミングを合わせるように、頷く。
「「とーかいどーさん、大好き!」」
そんな言葉と共に、東海道の両頬に柔らかな衝撃と、可愛らしい、ちゅっと言う音が耳に届いた。
二人からの可愛らしいお祝いに、流石の東海道も驚きを隠せなかったのか、目を見開いて固まっていた。
そんな様子を楽しそうに見ていた二人の頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜるように撫でてやると、キャーキャー言って逃げ出してしまう。
その後を追いかけようとした東海道は………目を覚ました。
「夢…か」
ずいぶんと懐かしい夢を見たと、遠い過去を思い出しながら、ベッドから起き上がって背を伸ばす。
今日と言う日が見せた夢なんだろうが、現実はどこまでも苦かった。
鉄道の日として全国でイベントが開催されるが、一応主役の東海道がそのどれかに参加する訳でも無く、客足が比較的落ち着いた昼過ぎに会議まで入っていた。
「………昔は、あんなに可愛かったのにな」
「何?いきなり」
夢の中の二人がこれでもか!と大きく成長して、東海道の目の前で打ち合わせをしている。
感慨深い思いの中、打ち合わせが終わったとはいえ、東海道の突然の独り言に、宇都宮は軽く目を開いて驚いていた。
「悪い。今朝、ちょっと夢でな……」
打ち合わせ中に考える事ではないと、小さくなりながらも今朝見た夢の内容を話す。
「そんな事、あったか?」
「何、そんな昔の事思い出してるの」
両極端な二人の、らしい反応に苦笑いを浮かべていると、高崎が何かを思い出したようで、にやりとしながら東海道の方を見た。
「昔の事ばかり言い出したら、年寄りの証拠らしいぜ」
高崎の言葉に乗るように、少々大げさに眉をしかめながら宇都宮が続ける。
「高崎、本当の事だけど、言ったら可哀想だよ」
「お前らな!俺とそんなに変わらないだろ!」
「「でも、東海道が一番年上だし」」
何十年経っても、この辺りの息の合い方は憎らしいくらいピッタリだ。
ガックリと肩を落とす東海道の両脇に移動した二人は、東海道の頭の上でそっと目くばせをする。
「「東海道さん、お誕生日、おめでとうございます」」
夢の中のように、綺麗に揃って宇都宮と高崎は東海道に祝いの言葉と、頬に軽いキスを贈った。
「んなっ!」
何を言われ、何をされたかを理解した途端、東海道はガタンと、椅子を倒す勢いで立ち上がる。
「そっ、そろそろラッシュが始まるから、東京に戻るなっ!」
半ば言い捨てるようにして会議室を出ようとする東海道の背中にこれまた綺麗に揃った声が飛んできた。
「「ケーキの用意してあるから、忘れないでね」」
その言葉に、手を振ることで答える東海道に、二人は嬉しそうに目を細める。
まずは、何事も無く終電を迎えることが大前提だと、それぞれが終業時間までいつも以上に気合を入れた。
終
………なんだ、このハーレム。いいなぁ。
・オマケ・
「ケーキ、予約しといて正解だな」
「そうだね。じゃぁ、受取に行く?」
「おぅ!ろうそく、何本立てれるかな?」
「……君、まさか140本立てるつもり。ケーキが燃えるよ」
「そこまで、立てるつもりねぇよ!」
果たして、東海道の140歳のケーキにろうそくは何本立てられたかは、三人だけの秘密になったらしい。
[8回]
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