東海道が山陽の部屋を訪れた時、その手には白いビニール袋。
半透明の袋からオレンジの固まりがゴロゴロと見える。
「何これ?」
「みかんです」
「それはわかってるけどさ…」
「こたつに、みかんの組み合わせが最高だって言っていたので、お裾分けです」
聞けば、東海の生協で職員がまとめ買いをするので市場価格よりお値打ち価格になるらしく、在来室用と自室用に購入している分からのお裾分けだそうだ。
自分が何気なく行った言葉を覚えていてくれた事が嬉しいと、喜んだ山陽は上機嫌で東海道を部屋に招き入れる。
「最近の甘いみかんも美味しいですけど、昔ながらの酸っぱいみかんも好きなんですよね」
「へぇ…」
一人暮らし用の小さなコタツに高々と積まれたみかんの山から一つを手に取った山陽が、目の前の恋人の制服と同じ色をした皮を剥いていく。
「じゃ、いただきまーす」
一口食べて、その酸味に口の中がぎゅっと窄まる。
「すっぱ!」
「言ったじゃないですか。昔ながらのすっぱいみかんだって」
「こんなにすっぱかったっけ?」
「これは、特にすっぱい品種ですからね。すっぱいの駄目ですか?」
「駄目じゃないけど、ちょっとびっくり…かな?」
東海道も一つ取って食べてみるが、流通されているものよりも強めの酸味が口に広がる。
食べ慣れない者にはちょっと食べ辛かったかもしれないと、密かに反省をしていると、東海道の頬をぷにっと山陽がつつく。
「でもさ、ジュニアが食べさせてくれるなら、きっと甘くなるぜ?」
そんな事を言う山陽の口に、東海道は手にしていたみかんを全部突っ込んだ。
目の前でイトコがみかんを食べて、酸っぱさに震えてるのを見てそんな妄想をしてた俺。
[2回]
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